この春、知人女性まりさんの娘さんが大学を卒業しました。
アパートでひとりぐらしをしていた娘さんは東京での就職が決まり、アパートを退去することとなりました。
「卒業おめでとう♪」
「就職おめでとう♪」
そんなお祝いムードに水を差す事件が勃発したのです。
「それがね…娘が借りていたアパートの大家さんから請求書が届いたの」
請求書には金拾萬円と手書きで書いてあったそうです。
「10万円!?」
話を聞いた私たちは口をあんぐり開けて、ただただ狼狽えるばかり。
ところがまりさんの旦那さんは、素晴らしく強かったのです。
几帳面な性格の旦那さんは、アパートの書類一式をファイルにまとめていたそうで。
契約書を始め、敷金礼金の領収書もきっちりファイリングされていました。
「アパートは不動産屋の仲介なのに、大家が直接請求するなんておかしい」
旦那さんは冷静に調べ始めたそうです。
「絶対おかしい。
不動産屋にまず異議申し立てしよう」
旦那さんはそう言うと、パソコンで文書を作り不動産屋さんに郵送したそうです。
【不動産屋を仲介した物件に対し、大家から直接請求書が届きました。
納得いかないので説明してください】
文書には大家さんから送られた請求書原本を同封したそうです。
請求書原本を同封したのは(払うつもりはありませんよ)という意思表示だったそう。
不動産屋さんからはすぐに連絡が来たそうです。
【大家さんが勝手にしたことで本当に申し訳ありません。
こちらから大家さんに話しますが、強引な方なのでこちらでも困っております。
敷金でまかなえない部分は大家さんから請求の連絡がありますので、対応をお願いします】
つまり…不動産屋さんも大家さんを抑えきれないらしく、借主に丸投げになっているようでした。
不動産屋さんからの返事を聞いて、俄然奮起する旦那さん。
「徹底的に戦うぞ💢
不動産屋が『大家と直接やってくれ』って言うならやってやろうじゃないか」
旦那さんの目がキラーン✨
まりさんの話によると…そもそもお預けした敷金は5万円。
敷金とはいえ、よほどのことがない限りは5万円全額返ってくるのが基本のはずです。
原状回復義務とは借りた状態に戻すことではありません。
借主の故意・過失・注意義務違反がなければ、経年変化と通常消耗は借主の責任ではないんですもん。
大家さんからは再度8万円の請求書が郵送されました。
(最初の10万円から、値引いてあげましたよ)という浅はかな思惑が透けて見えます。
旦那さんはすぐさま質問書を作成
【お預けした敷金が5万円。
それにプラスして8万円の請求ということは、原状回復として13万円も請求されていることになります。
13万円の内訳をいただけますか?】
手紙には国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のコピーも同封しました。
親切にも該当の箇所にマーカーを引いて、わかりやすくして差し上げたそうです。
大家さんからはすぐに返事が来ました。
【敷金5万円を預かっていたことを失念していました。
修繕費は13万円ではなく8万円となります。
8万円の内訳は、床材(クッションフロア)の張り替え工事です。
床が傷んでおり、全面張り替えが必要なためです。
8万円から敷金5万円を引いた3万円をお支払いください】
退去時にはまりさんと娘さんだけが立ち会い、アパートの状況は把握していたそうです。
「床に限らず、目立った傷みもなく、引き渡し時にはなにも指摘されなかった」とのこと。
まりさんの話を聞いた旦那さんの目はぎらーん💥
「ぼったくり大家だな。
今までずっと学生にそんなあこぎな商売をしてきたんだろう…
許せんな。徹底的にやってやる」
旦那さんの奥の手。
それが【減価償却】&【法的手続き】です。
クロスやクッションフロアは入居年数に応じて負担割合が減っていきます。
それも借主に故意・過失・注意義務違反があった場合です。
大学生活の4年間住んだわけですから、33%の負担割合になるのです。
請求額8万円の33%であれば26,400円ですが、それだって過失があった場合の話です。
万が一、過失があったとしても預けた敷金の約半分が戻ってくる計算です。
【クッションフロアの傷みについて。
減価償却を考慮しても26,400円ですが、借主の故意・過失・注意義務違反という認識はありません。
経年変化と通常消耗と考えますので、敷金5万円をご返金いただきたく存じます。
ご納得いただけない場合は法的手続きを取らせていただきます】
事務的な文書に【退去時の減価償却資料】を添付して、大家さんと不動産屋さんにも郵送したんですって。
恐らく、ですが…
ぐうの音も出ないほどの論破だったんだと思うんです。
丸投げにしていた不動産屋さんも(ヤバい!)と思ったことでしょう。
結果、不動産屋さんからは陳謝のお手紙と敷金返金の書類が届いたそうです。
ですが、大家さんからは謝罪に見せかけた恨み言の直筆のお手紙が届いたんですって。
【老い先短い老人を痛めつけて楽しいか】的な…
退去時のトラブルは泣き寝入りせず、調べるとよさそうです。
春の引越シーズンに聞いた驚きの「今だからこそ話せる」お話でした。
特別お題「今だから話せること」